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新 歪んだ愛の形[後編] [Page 2/12]
2 : 公園の二人
公園では、何人かの子供達がサッカーに興じていた。正太は公園の隅にあるベンチに座り、バットで地面を軽く叩きながらまだ来ない竜太を待っていた。
《ちょっと早く来すぎちゃったかな…》
そんなことを思っていると、向こうのほうから竜太の声が聞こえてきた。
「おおーい、正太ーっ!」
竜太は錆びた自転車を飛ばしながら手を振っている。正太の顔は一瞬にして明るくなった。公園の入り口に自転車を止めると、竜太はベンチの所へ走ってきた。
「悪ぃ、待った?」
「ううん、全然。今来たところだから」
正太はベンチから立ち上がった。
「それじゃあ始めるか?」
とは言ったものの、自転車を猛スピードでこいできた為に竜太の息はかなり苦しそうだ。正太はまたベンチに座り、竜太の方に顔を向けた。
「少し座って休んだら?そんなに急がなくっても良かったのに」
「へへっ、そうだな」
竜太は正太のとなりに腰掛けた。
二人はしばらくの間ずっとサッカーをしている子供達を眺めていた。
「お前サッカーとかするの?」
突然の質問に正太はちょっと戸惑った。
「えっ?しないよぉ…だって僕運動音痴なんだもん。体育なんてずっと1だよ」
それを聞いて竜太は笑い出した。
「アーッハッハッハ…やっぱりウンチか。そうだと思ったぜ」
竜太はヒイヒイ息を切らしながら笑っている。
「何だよぉ…笑うなんてひどいや」
正太は顔を真っ赤にしてふくれた。
「だってさあ、始めて会った時にこいつはウンチだって感じたんだ。だって女みてえだったんだもん」
始めて会った時…。正太はそのときのことを思い返した。隣に住む幼なじみのお姉ちゃん、明美のペットとして、いつものように彼女の部屋で調教を受けるべく裸になっていた正太は、明美の従兄弟である竜太にいきなり犯されてしまったのだ。しかもそれが信頼していた明美の仕組んだ事と知り、その日以来正太は明美とは全く口を聞かなくなってしまった。
《お姉ちゃん…》
正太は足元の地面を呆然と眺めていた。
「何だよ正太、ボーッとしてさぁ」
竜太が正太の顔を覗き込んできた。はっと我にかえった正太は、首を振って何でもないと答えると、ベンチから立ち上がってバットを構える格好をした。
「さっ、野球始めようよ」
「おう!お前最初バッターやれよ。俺ピッチャーやるから」
竜太は向こうの方に走っていき、5・6メートル位の所でくるっと振り向いた。
「よーっし、ピッチャー振りかぶって…投げました!」
自分でアナウンスをしながら竜太はボールを投げた。そのボールは勢い良く正太の後ろのベンチに当たった。正太はバットも振らず、ただ立っていただけだった。
「ストライク!どうだ俺の豪速球」
「ねえ、もうちょっと手加減してよぉー」
ボールを投げ返しながら正太は言った。ボールを受け取り、ジャンパーと上着を脱いでランニングシャツ一枚になった竜太は、しょうがねえなあ、といった感じでもう一度振りかぶった。
正太は、今度は目をつぶって思い切りバットを振った。すると、コンという乾いた音と共に竜太のボールは公園の外れの茂みの方まで飛んでいってしまった。
「やったぁ、大ホームランだ」
「バーカ。今のは大ファールだよ。全くあんな所まで飛ばしやがって…」
グローブを足元に置いてジャンパーを手にとった竜太は、ブツブツいいながら茂みのほうへ走っていった。正太も責任を感じたのか竜太の後をついてくる。
「お前は来なくたっていいぜ。俺一人で探すから」
「だってボールを打ったのは僕なんだもん。一緒に探すよ」
正太はすまなそうな顔をして言った。
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