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新 歪んだ愛の形[後編] [Page 1/12]
1 : 一緒に遊ぼう!
だんだんと風が身にしみる季節になって、下校時の子供達の中にも長袖が目立つようになってきた。それでも放課後の子供達は元気である。今日は何処で遊ぼうかと相談する子、塾の宿題について話し合っている子など、下校時の風景はさまざまである。
そんなある土曜日の放課後、正太と竜太が二人で話をしながら歩いていた。
ちょうど半月くらい前、二人は愛し合っている所を正太のクラスメイトの桑野麻衣子に見られてしまい、それ以来二人は麻衣子のペットとして、放課後になると彼女の前でセックスを披露したり、彼女の強要するハードプレイを素直に受けなければならなくなっていた。
しかし、それでも二人の性生活は変わるわけではなく、むしろ前よりもっと強く結びついているような感じさえする。昼休みや、麻衣子が塾に行く日などには、二人きりで愛を深めているのである。
この日も麻衣子が塾でいないために、放課後二人はいつもの体育用具室で熱い情事にふけり、そしてそのあと一緒に帰っていたのである。
正太は緑のトレーナー、竜太は長袖のTシャツにジャンパーを着ていて、二人とも半ズボンである。そして、背には黒いランドセルが見える。
「おい正太、今日野球しねえか?」
ランドセルを右肩だけに掛けている竜太が、おもむろに切り出してきた。
「えっ?野球?でも僕運動苦手だから…」
体操着袋を両手で持っている正太は、下を向いた。
「バカだなあ。ただ飛んできたボールを打てばいいだけじゃんかよ。お前バットぐらいは持ってんだろ?」
「う…うん。前にパパが買ってきてくれたのがあるけど」
「じゃあそれ持ってこいよ。俺グローブとボール持ってくるからさ。じゃあ…お前んちの近くの公園でいいか?」
竜太は一人でどんどん話を進めている。
「うん、いいよ。でも珍しいね、竜太が一緒に遊ぼうだなんて。いつもは…あの時だけなのに」
「へへっ、いいじゃん別に」
竜太は人差指で鼻の下を擦ってちょっと笑った。
そろそろ二人の別れる交差点に近づいてきた。
「じゃあね、バイバイ」
「おう、昼飯食ったらすぐ行くからな」
正太は何だか不思議な気分だった。なぜなら竜太と普通に遊ぶなんて事はまだ一回もなかったからである。銭湯やプールには一緒に行ったことがあるが、それは竜太のH目的だったし、互いの家に行けば必ずセックスだし、そのセックスの後はいつも何も言わずにただ愛の余韻に浸るだけだったから、この日の竜太の言葉は正太にとって本当に意外だった。
竜太と別れた正太は急いで自分の家に向かった。
正太の両親は共働きだが、今日は土曜日なので母親がキッチンで昼食の準備をしていた。
「ただいまぁ。ねえママ、パパの買ってくれたバット何処にあるの?」
正太の母親はいつになく元気な息子の声にびっくりした。
「あら、この子はスポーツなんて全然しなかったのに一体どうしちゃったのかしら?バットなら一回使ったきりで物置きに置きっ放しよ」
正太は急いで物置きに行くと、その奥から木製のまだ真新しいバットを引っ張り出してきた。母親は少し嬉しそうだ。
「新しいお友達でもできたの?すごく楽しそうじゃない」
「えへへ…そうなんだ。ねえ早くお昼ごはん作ってよぉ」
正太は母親をせかした。
   *   *   *   
その頃竜太も家に帰っていた。
竜太の父親は大工をしているので、土曜や日曜も家には居ない。そのかわり母親が内職をしながらずっと家を守っているのだ。
竜太は台所で昼食のうどんをさっさと平らげると、年期の入ったグローブとボールを持って立ち上がった。
「かあちゃん、俺ちょっと遊びに行ってくるわ」
「こら竜!宿題は無いのかい?」
少し太りぎみの母親は、空のどんぶりを片づけながら強い口調で言った。
「んなもんねえよ。じゃいってきまーす」
竜太はちょこっと舌を出しながら玄関を飛び出した。
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